個人事業主が事業用兼プライベート用の車を購入・売却したときの消費税

 個人事業主の方から、次のようなご質問をいただくことがあります。

 仕事とプライベートの両方で使う車を購入した場合、消費税は全額控除できますか?
 その車を売却した場合、売却代金の全額が課税売上になるのでしょうか?

 結論からいうと、購入時も売却時も、原則として事業に使用している部分だけを消費税の計算に含めます。
 例えば、事業70%・プライベート30%で使用している車であれば、購入時に仕入税額控除できるのは原則70%です。売却時に課税売上となるのも、原則として売却額の70%部分です。
 今回は、個人事業主が事業とプライベートの両方で使用する車を購入・売却した場合の消費税と所得税、会計処理について解説します。

 ※この記事は、消費税の課税事業者が一般課税を適用している場合を前提としています。

1 事業兼プライベートの車とは

 個人事業主が、仕事と私生活の両方で使用する車は、一般に「家事共用資産」と呼ばれます。
 家事共用資産については、所得税だけでなく、消費税についても事業部分とプライベート部分を区分しなければなりません。
 国税庁の消費税基本通達では、家事使用部分は「事業として行われる課税仕入れ」に該当せず、使用実態に基づく使用率など、合理的な基準によって事業部分を計算するとされています。

 事業割合の決め方
 事業割合は、単に「だいたい70%」と決めればよいわけではありません。
 例えば、次のような記録を基に合理的に計算します。

  • 年間走行距離のうち、仕事で走行した距離
  • 運行記録や車両日報
  • スケジュール帳や訪問記録
  • 使用日数や使用目的
  • 事業用の訪問先と私用の移動先

 税務調査で説明できるように、走行距離や利用目的を記録しておくことが大切です。

2 車を購入したときの消費税

 事業とプライベートの両方で使用する車を購入した場合、消費税の仕入税額控除を受けられるのは、原則として事業使用部分だけです。
 例えば、車両本体に含まれる消費税が60万円で、事業割合が70%であれば、仕入税額控除の対象となる消費税は次のとおりです。

 60万円 × 70% = 42万円

 残りの18万円はプライベート部分に対応するため、仕入税額控除の対象にはなりません。

 購入額660万円、事業割合70%の場合
 次の条件で考えてみます。

  • 車両購入額:660万円(税込)
  • 税抜価格:600万円
  • 消費税:60万円
  • 事業使用割合:70%
  • プライベート割合:30%
  • 税抜経理方式

 事業部分は次のようになります。

内容金額
事業用の車両本体価格420万円
控除対象となる消費税42万円
プライベート部分198万円
支払総額660万円

 事業部分だけを帳簿に計上する場合の仕訳例は次のとおりです。

借方金額貸方金額
車両運搬具4,200,000円普通預金6,600,000円
仮払消費税等420,000円
事業主貸1,980,000円

 プライベート部分については事業の必要経費にならないため、「事業主貸」で処理します。
 なお、会計ソフトの固定資産台帳に購入額全額を登録し、減価償却費を事業割合で按分する方法もあります。どちらの方法を採用する場合でも、消費税の仕入税額控除は事業部分に限定する必要があります。

3 車を売却したときの消費税

 事業とプライベートの両方で使用していた車を売却した場合も、原則として事業使用部分だけが消費税の課税対象になります。
 国税庁も、事業用と家事用に共通して使用している資産については、事業用部分を按分して課税するとしています。
 例えば、事業割合70%の車を330万円(税込)で売却した場合は、次のように計算します。

内容金額
売却額330万円
事業部分70%231万円
プライベート部分30%99万円

 231万円の内訳は次のとおりです。

  • 税抜の課税売上:210万円
  • 仮受消費税:21万円

 プライベート部分の99万円は、事業として行った譲渡ではないため、消費税の課税対象外となります。

 売却時の仕訳例

借方金額貸方金額
普通預金3,300,000円固定資産売却収入2,100,000円
仮受消費税等210,000円
事業主借990,000円

 「固定資産売却収入」は、事業部分に対応する消費税を正しく認識するための便宜的な勘定科目です。
 ただし、個人事業主の車両売却損益は、所得税では原則として事業所得ではなく譲渡所得になります。そのため、最終的には帳簿上の売却損益を事業主勘定へ振り替え、確定申告で譲渡所得として計算します。

4 売却損が出ても消費税はかかる

 車の売却でよく誤解されるのが、次の考え方です。
 購入価格より安く売って損をしたのだから、消費税はかからないのでは?

 しかし、消費税は「利益」に対してかかる税金ではありません。
 消費税は、課税資産を譲渡した際に受け取る「売却代金」に対して課税されます。したがって、帳簿価額より安く売却して搚失が出た場合でも、事業部分の売却代金には消費税がかかります。
 事業用の車両や機械などの固定資産を売却した場合、その譲渡は事業に付随する取引として消費税の課税対象になります。

 具体例
 次の条件で考えてみます。

  • 車の事業部分の帳簿価額:300万円
  • 売却額:110万円(税込)
  • 事業割合:70%

 事業部分の売却額は次のとおりです。
 110万円 × 70% = 77万円(税込)

 事業部分の消費税は次のとおりです。
 77万円 ÷ 1.1 × 10% = 7万円

 帳簿上は大きな売却損が発生しますが、それとは別に7万円の仮受消費税を認識しなければなりません。
 つまり、次の2つは別々に考える必要があります。
 消費税:事業部分の売却代金に対して計算
 所得税:売却益または売却損に対して計算

5 購入・売却時の具体例と仕訳

 売却益が発生する場合
 事業部分の税抜売却額が210万円、事業部分の帳簿価額が150万円だったとします。
 消費税を認識した後、次の仕訳で車両を帳簿から消し込みます。

借方金額貸方金額
固定資産売却収入2,100,000円車両運搬具1,500,000円
事業主借600,000円

 60万円の売却益は事業所得ではなく、譲渡所得として別に計算するため、「事業主借」で事業の損益から除外しています。

 売却損が発生する場合
 事業部分の税抜売却額が210万円、帳簿価額が300万円だった場合は、90万円の売却損が発生します。

借方金額貸方金額
固定資産売却収入2,100,000円車両運搬具3,000,000円
事業主貸900,000円

 この90万円も事業所得の必要経費として処理するのではなく、譲渡所得の計算に反映させます。
 会計ソフトによって固定資産売却時の消費税の認識方法が異なるため、売却仕訳を入力した後は、消費税集計表で課税売上が正しく計上されているか確認しましょう。

6 所得税では原則として譲渡所得

 個人事業主が事業で使用していた車両や備品を売却した場合、その売却損益は、原則として事業所得ではなく「譲渡所得」になります。
 国税庁は、土地・建物・株式以外の資産の譲渡について、原則として総合課税の譲渡所得になるとしています。
 譲渡所得は、基本的に次の算式で計算します。

 譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除額

 土地・建物・株式などを除く総合課税の譲渡所得には、年間最高50万円の特別控除があります。
 また、所有期間によって次のように区分されます。

所有期間区分課税対象
5年以内短期譲渡所得所得金額の全額
5年超長期譲渡所得所得金額の2分の1

 ただし、取得価額10万円未満の減価償却資産や、一括償却資産として処理した資産などの売却は、事業所得または雑所得になります。
 一方、中小企業者等の30万円未満の少額減価償却資産の特例を使って全額経費にした資産については、売却時は原則として譲渡所得になります。

 プライベート部分の所得税
 通常の生活や通勤に使用している自動車は「生活用動産」に該当し、その売却益は所得税が非課税となる場合があります。
 したがって、事業兼プライベートの車については、事業使用部分を譲渡所得として計算し、生活用部分については生活用動産の取扱いを検討することになります。

 売却年の減価償却費
 年の途中で車を売却した場合、売却日までの減価償却費については、次のいずれかの処理が認められています。

  1. 売却日までの減価償却費を事業所得の必要経費にする
  2. 減価償却費を事業所得に計上せず、譲渡所得の取得費に含める

 所得税基本通達49-54でも、売却日までの償却費を事業所得等の必要経費に算入して差し支えないとされています。
 どちらを選択するかによって事業所得と譲渡所得の金額は変わりますが、税率や損益通算の状況によって最終的な税額に差が生じることがあります。

7 ガソリン代や修理代も家事按分が必要

 家事按分が必要なのは、車両本体だけではありません。
 次のような車両関連費用についても、事業部分だけが必要経費および仕入税額控除の対象となります。

  • ガソリン代
  • 高速道路料金
  • 修理代
  • 車検整備費用
  • タイヤ交換費用
  • 洗車代
  • 月極駐車場代

 例えば、ガソリン代11,000円(税込)を支払い、事業割合が70%だった場合は、次のように計算します。

内容金額
税抜の事業経費7,000円
仮払消費税700円
プライベート部分3,300円

 仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
車両費7,000円現金11,000円
仮払消費税等700円
事業主貸3,300円

 原則として車両本体と同じ事業割合を使用しますが、費用ごとに利用実態が異なる場合は、それぞれ合理的な割合で計算します。

8 実務上の注意点

  車両購入額のすべてが10%課税とは限らない
 実際の車両購入明細には、車両本体以外にも次のような項目が含まれています。

  • 自動車税や重量税
  • 自賠責保険料
  • 登録に関する法定費用
  • リサイクル預託金
  • 販売店の代行手数料
  • オプションや整備費用

 項目によって消費税区分が異なるため、総額を一律に10%課税として処理してはいけません。
 特にリサイクル預託金は、金銭債権の譲渡として非課税となる場合があります。一方、中古車売買における未経過自動車税相当額などは、車両の譲渡対価に含まれ、課税対象になるとされています。
 販売店から受け取った明細書や適格請求書を確認し、項目ごとに処理しましょう。

  インボイスの保存も必要
 一般課税で仕入税額控除を受けるためには、原則として適格請求書等の保存が必要です。
 購入先がインボイス登録をしていない事業者や一般消費者である場合は、控除できる消費税額が制限されることがあります。
 単に「税込価格だから消費税を控除できる」と判断しないよう注意が必要です。

  下取りも売却として処理する
 新しい車を購入する際に古い車を下取りに出した場合も、税務上は次の2つの取引に分けて考えます。

  • 新しい車の購入
  • 古い車の売却

 差額だけを車両購入額として処理すると、古い車の課税売上が漏れてしまう可能性があります。

  簡易課税の場合は第4種事業
 簡易課税制度を適用している事業者が、使用していた固定資産を売却した場合、その売却収入は、原則として本業の業種にかかわらず第4種事業になります。車両や備品も対象です。
 一般課税とは納付税額の計算方法が異なるため、この記事の仕入税額控除の計算をそのまま使用することはできません。

  廃車・除却だけなら消費税はかからない
 車を廃棄して対価を受け取らない場合は、資産の譲渡に該当しないため、消費税の課税対象にはなりません。
 ただし、解体業者などから鉄くず代や買取代金を受け取った場合は、その受取額について課税売上となる可能性があります。

まとめ

 事業とプライベートの両方で使用する車については、購入時も売却時も家事按分が必要です。
 重要なポイントを整理すると、次のとおりです。

  • 購入時に仕入税額控除できるのは事業使用部分だけ
  • プライベート部分は「事業主貸」などで処理する
  • 売却時も原則として事業使用部分だけが課税売上になる
  • 売却損が発生しても、事業部分の売却代金には消費税がかかる
  • 個人事業主の車両売却損益は、所得税では原則として譲渡所得
  • ガソリン代や修理代なども事業割合で按分する
  • 下取りの場合も、購入と売却を分けて処理する
  • 簡易課税では固定資産の売却は原則として第4種事業になる

 車両の購入・売却は金額が大きく、消費税区分を誤ると申告税額にも大きな影響が生じます。
 また、車両本体だけでなく、リサイクル預託金、税金、保険料、登録費用など、それぞれ異なる消費税区分が含まれている点にも注意が必要です。


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