NISAとiDeCoはどちらを先に始める?税制メリットと使い分けを税理士が解説

 老後に向けた資産形成を考えるとき、よく比較されるのが「NISA」と「iDeCo(イデコ)」です。
 どちらも運用益が非課税になる制度ですが、税金の面から見ると大きな違いがあります。

 老後資金として積み立てるのであれば、まずiDeCoを検討し、そのうえでNISAを利用する
 という考え方も有力です。

 今回は、NISAとiDeCoの違いと、どのように使い分ければよいのかを分かりやすく説明します。

1 NISAとiDeCoの大きな違い

 NISAとiDeCoは、どちらも投資信託などを利用して資産形成ができる制度です。
 2024年からのNISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を合わせて年間最大360万円、非課税保有限度額は1,800万円となっています。運用によって得た利益や配当等には原則として税金がかかりません。

 一方、iDeCoは自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選択して老後資金を準備する私的年金制度です。
 最大の違いは、

 iDeCoでは、掛金そのものが所得控除になる

 という点です。

2 iDeCoには3段階の税制メリットがある

 iDeCoには、大きく3つの税制上のメリットがあります。

掛金を支払うとき
 iDeCoに支払った掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。
 そのため、課税所得が減少し、所得税・住民税の負担を軽減することができます。
 例えば、年間24万円をiDeCoに拠出した場合、その24万円が所得から控除されます。
 所得税率10%、住民税率10%程度の方であれば、単純計算では年間約4万8,000円程度の税負担軽減効果が期待できます。
 NISAには、この「掛金を支払った時点での所得控除」はありません。

運用しているとき
 通常、投資信託などの運用で利益が出れば税金がかかりますが、iDeCoの制度内で生じた運用益は非課税となります。
 これはNISAも同様です。

受け取るとき
 iDeCoは、一時金として受け取る場合には原則として退職所得となり、退職所得控除の対象になります。
 年金として受け取る場合には、公的年金等として課税され、公的年金等控除を利用できます。
 
 つまりiDeCoは、
 「積み立てるとき」「運用するとき」「受け取るとき」
 の3段階で税制上の優遇が用意されている制度
です。

3 老後資金なら「iDeCoを先に検討する」という考え方

 このような税制上の違いから、老後資金を目的とするのであれば、

① iDeCoの利用を検討する
② さらに投資できる余裕があればNISAを利用する

 という順番は合理的です。
 特に、所得税や住民税をある程度負担している会社員や個人事業主の場合には、iDeCoの所得控除による効果が大きくなります。
 NISAも非常に優れた制度ですが、NISAは「投資した金額」が所得控除になるわけではありません。 税負担を軽減しながら老後資金を積み立てられることが、iDeCoの大きな特徴です。

4 ただし、誰でもiDeCoを優先すればよいわけではない

 一方で、iDeCoにも注意点があります。
 最も大きいのが、
 原則として60歳まで自由に引き出せない
 こと
です。

 老齢給付金は原則60歳から受け取れますが、60歳時点での通算加入期間が10年未満の場合などには、受給開始年齢が後ろにずれる場合があります。
 これに対してNISAは、必要になれば途中で売却して現金化できます。
 そのため、
 「住宅購入資金に使う可能性がある」
 「教育費として使うかもしれない」
 「手元資金をあまり減らしたくない」
 という場合には、NISAの方が使いやすいこともあります。

 また、専業主婦・主夫や所得が少ない方など、そもそも所得税・住民税の負担が少ない場合には、iDeCoの「所得控除」のメリットを十分に受けられないことがあります。
 さらにiDeCoには加入時や掛金納付時などに手数料もかかります。

 したがって、
 「iDeCoの方が必ず得」と考えるのではなく、資金をいつ使うのかまで考えることが重要です。

5 2026年12月からiDeCoがさらに拡充

 iDeCoについては、2026年12月1日から大きな制度改正が予定されています。
 会社員などの第2号被保険者については、企業年金の有無による限度額の違いを整理し、企業年金等と合わせた共通の拠出限度額が月額6万2,000円へ引き上げられます。
 自営業者などの第1号被保険者についても、iDeCoと国民年金基金等を合わせた限度額が月額7万5,000円へ引き上げられます。
 さらに、一定の条件を満たす60歳以上70歳未満の方についても、iDeCoへの加入・継続拠出が可能となるよう制度が拡充されます。
 老後資金づくりにおけるiDeCoの重要性は、今後さらに高くなりそうです。

6 iDeCoを一時金で受け取るときは要注意

 iDeCoは受取時にも税制優遇がありますが、
 「一時金なら必ず税金がかからない」わけではありません。
 特に会社から退職金を受け取る方は、退職金とiDeCoを受け取る時期によって退職所得控除の計算が変わることがあります。
 2026年からは、iDeCoの老齢一時金を受け取った後に別の退職金を受け取る場合の重複期間の調整について、対象期間が拡大されています。
 そのため、会社の退職金がある方は、iDeCoを何歳で、どのような方法で受け取るかについても事前に検討しておくことが大切です。

7 中小企業なら「iDeCo+」という制度も

 従業員300人以下で企業年金を実施していない中小企業には、**「iDeCo+(イデコプラス)」**という制度もあります。
 従業員が加入しているiDeCoの掛金に、会社が掛金を上乗せして支払う制度です。
 会社が負担した掛金は、全額を損金に算入することができます。
 大がかりな企業年金制度を導入することなく、従業員の老後資金形成を支援できるため、中小企業の福利厚生の一つとして検討する価値があります。

まとめ|iDeCoとNISAは目的によって使い分ける

 iDeCoとNISAは「どちらが優れているか」というよりも、役割が少し違います。

 60歳以降の老後資金として確実に積み立てるお金ならiDeCo。
 途中で使う可能性がある資金や、iDeCoの限度額を超えて投資する資金ならNISA。

 このように考えると分かりやすいでしょう。
 特に所得税・住民税を負担している方にとっては、掛金そのものが所得控除になるiDeCoは大きなメリットがあります。
 ただし、現在の所得や勤務先の企業年金、退職金の有無、今後必要となる資金などによって、適した組み合わせは変わります。

 佐沼幸太郎税理士事務所では、仙台市の個人事業主・法人経営者の方を中心に、税金だけでなく将来の資産形成も踏まえたご相談に対応しています。
 iDeCoやNISAを含め、「税金を払いながら、どのように資産を残していくか」を検討されている方は、お気軽にご相談ください。

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