借上げ社宅で節税する方法|役員・従業員の家賃計算と仕訳を仙台市の税理士が解説

会社が役員や従業員の住居を法人名義で借り、その住宅を社宅として貸し出す制度を「借上げ社宅」といいます。
借上げ社宅を適切に導入すると、会社が支払う家賃と、役員・従業員から受け取る社宅使用料との差額を会社が負担できます。
役員や従業員にとっては、家賃の全額を個人で負担するよりも手取りを増やしやすく、会社にとっては福利厚生の充実や人材採用にも活用できる制度です。
ただし、会社が家賃を支払えば、どのような場合でも節税になるわけではありません。
特に注意したいのが、よく聞く「家賃の50%を本人から受け取ればよい」という説明です。
役員と従業員では計算方法が異なり、すべてのケースで実際の家賃の50%を受け取ればよいわけではありません。
今回は、借上げ社宅の条件、役員・従業員ごとの賃貸料相当額、仕訳、消費税の取扱いについて解説します。
※本記事は、2026年7月16日時点で確認した法令・国税庁公表資料を基に作成しています。
1 借上げ社宅とは
借上げ社宅とは、会社が不動産会社や家主と賃貸借契約を結び、その住宅を役員や従業員に貸し出す制度です。
一般的には、次のような流れになります。
① 会社が賃貸物件を法人名義で契約する
② 会社が家主に家賃を支払う
③ 役員または従業員が社宅として入居する
④ 会社が入居者から一定の社宅使用料を受け取る
入居者本人が賃貸借契約を結び、会社が家賃の一部を負担する方法は、原則として借上げ社宅ではなく「住宅手当」として扱われます。
住宅手当や本人名義の家賃を会社が負担した場合は、原則として給与として所得税が課税されます。
したがって、借上げ社宅として運用するためには、原則として会社が賃貸借契約の当事者になる必要があります。
2 借上げ社宅が節税になる仕組み
例えば、会社が家主に月額10万円の家賃を支払い、役員から社宅使用料として月額2万円を受け取るケースを考えてみましょう。
この場合、会社の実質負担額は次のとおりです。
家主へ支払う家賃10万円-役員から受け取る2万円=会社負担8万円
適正な社宅制度として運用されていれば、会社負担分は地代家賃や福利厚生費などとして会社の費用になります。
一方、役員や従業員についても、税法上必要とされる社宅使用料を会社に支払っていれば、会社負担分について給与課税されません。
つまり、同じ金額を給与として支給して本人が家賃を支払うよりも、税負担を抑えながら住居費を会社が負担できる可能性があります。
ただし、本人から受け取るべき金額は、入居者が役員か従業員かによって異なります。
3 借上げ社宅を導入するための条件
借上げ社宅を導入する場合は、少なくとも次の点を整えておきましょう。
(1) 会社名義で賃貸借契約を結ぶ
借上げ社宅では、会社が借主となり、会社から役員または従業員へ住宅を貸与します。
現在の個人契約を会社契約へ変更する場合は、単に家賃の引落口座を会社に変えるだけでは足りません。
不動産会社や家主の承諾を得て、賃貸借契約自体を法人名義に変更する必要があります。
(2) 会社が家主へ直接家賃を支払う
家賃は会社の預金口座から家主や管理会社へ直接支払う形が分かりやすいでしょう。
本人が家賃を支払い、後から会社が精算する方法では、住宅手当や個人的費用の負担と判断される可能性があります。
(3) 適正な社宅使用料を受け取る
役員または従業員から、税法上の基準に基づいて計算した社宅使用料を毎月受け取ります。
給与から天引きする方法でも問題ありませんが、給与明細に「社宅使用料」などの項目を設け、徴収の事実が分かるようにしておきましょう。
(4) 社宅規程を作成する
社宅規程は、税法上の絶対的な要件として定められているわけではありません。
しかし、役員や一部の従業員だけに恣意的な利益を与えたものではなく、会社の福利厚生制度として運用していることを説明するためにも、作成しておくことをおすすめします。
社宅規程には、次のような事項を記載します。
- 社宅を利用できる役員・従業員の範囲
- 入居の申請方法
- 会社と入居者の家賃負担
- 社宅使用料の徴収方法
- 水道光熱費や駐車場代の負担
- 故意・過失による修繕費の負担
- 退職・退任後の退去期限
- 社宅に空きがない場合の取扱い
- 同居家族に関するルール
4 役員社宅の賃貸料相当額
役員に社宅を貸与する場合は、住宅の規模によって計算方法が変わります。 大きく分けると、次の3種類です。
- 小規模な住宅
- 小規模な住宅に該当しない住宅
- 豪華社宅
5 役員に貸与する「小規模な住宅」
小規模な住宅とは、建物の法定耐用年数に応じて、次の床面積以下の住宅をいいます。
| 建物の法定耐用年数 | 床面積の基準 |
| 30年以下 | 132平方メートル以下 |
| 30年超 | 99平方メートル以下 |
マンションなどの区分所有建物については、専有部分だけでなく、共用部分の床面積を合理的に按分した面積を加えて判定します。
例えば、鉄筋コンクリート造のマンションは、法定耐用年数が30年を超えるケースが多いため、原則として99平方メートル以下かどうかで判定します。
小規模住宅の賃貸料相当額
次の①から③までの合計額が、1か月当たりの賃貸料相当額になります。
① その年度の建物の固定資産税課税標準額×0.2%
② 12円×建物の総床面積÷3.3平方メートル
③ その年度の敷地の固定資産税課税標準額×0.22%
この計算結果は年額ではなく、月額の賃貸料相当額です。
例えば、会社が月額10万円で借りているマンションでも、上記の計算による賃貸料相当額が月額2万円であれば、役員から月額2万円以上を受け取ることで、原則として会社負担分は給与として課税されません。
小規模住宅については、実際の家賃の50%を役員から受け取る必要はありません。
そのため、小規模住宅に該当するにもかかわらず、機械的に家賃の50%を徴収すると、役員の負担額が必要以上に大きくなることがあります。
6 役員に貸与する「小規模ではない住宅」
小規模住宅に該当しない場合は、会社が所有する社宅か、他人から借りた借上げ社宅かによって計算方法が異なります。
会社所有の社宅
次の①と②の合計額を12で割った金額が、1か月当たりの賃貸料相当額になります。
① 建物の固定資産税課税標準額×12%
② 敷地の固定資産税課税標準額×6%
①+②の合計額÷12か月
ただし、建物の法定耐用年数が30年を超える場合は、建物部分に乗じる割合が12%ではなく10%になります。
他人から借りた借上げ社宅
会社が借りた住宅を役員に貸与する場合は、次のいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
- 会社が家主に支払う家賃の50%
- 会社所有の社宅として計算した賃貸料相当額
例えば、会社が支払う家賃が月額20万円で、固定資産税課税標準額から計算した金額が月額8万円であれば、家賃の50%である10万円の方が大きいため、役員から月額10万円以上を受け取る必要があります。
「借上げ社宅なら家賃の50%でよい」という説明は、この小規模住宅に該当しない役員社宅のルールを指していることが多いと考えられます。
7 豪華社宅に該当する場合
役員社宅が社会通念上一般に貸与されている社宅とは認められない「豪華社宅」に該当する場合は、これまで説明した算式を使用できません。
豪華社宅に該当するかどうかは、床面積が240平方メートルを超える住宅について、次のような要素を総合的に考慮して判定します。
- 住宅の取得価額
- 会社が支払う家賃
- 内装・外装の状況
- 設備の内容
- 役員個人の好みが強く反映されているか
床面積が240平方メートル以下であっても、プールや役員個人の好みを著しく反映した特殊な設備がある場合には、豪華社宅に該当することがあります。
豪華社宅の場合は、実際の支払家賃と必ず同額になるというわけではなく、その住宅について「通常支払うべき使用料に相当する額」を役員から受け取る必要があります。
8 従業員社宅の賃貸料相当額
従業員に貸与する社宅については、次の①から③までの合計額が賃貸料相当額になります。
① その年度の建物の固定資産税課税標準額×0.2%
② 12円×建物の総床面積÷3.3平方メートル
③ その年度の敷地の固定資産税課税標準額×0.22%
計算式自体は、役員に貸与する小規模住宅と同じです。
ただし、従業員の場合は、この賃貸料相当額の50%以上を従業員から受け取っていれば、賃貸料相当額との差額について給与課税されません。
ここで重要なのは、実際に会社が支払っている家賃の50%ではないという点です。
従業員社宅の具体例
会社が家主に支払う家賃が月額10万円で、税法上の賃貸料相当額が月額1万円だったとします。
この場合、従業員から受け取る金額によって取扱いは次のようになります。
| 従業員から受け取る金額 | 給与課税 |
| 0円 | 1万円が給与課税 |
| 3,000円 | 差額7,000円が給与課税 |
| 5,000円以上 | 原則として給与課税なし |
従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば、賃貸料相当額との差額は給与課税されません。
逆に50%未満しか受け取っていない場合は、50%に足りない部分だけではなく、賃貸料相当額と実際に受け取った金額との差額が給与課税される点に注意してください。
9 役員社宅と従業員社宅の違い
役員と従業員の取扱いをまとめると、次のようになります。
| 入居者 | 住宅の種類 | 本人から受け取る金額 |
| 役員 | 小規模住宅 | 算式による賃貸料相当額以上 |
| 役員 | 小規模でない借上げ住宅 | 実際の家賃の50%と所定の算式のいずれか多い金額 |
| 役員 | 豪華社宅 | 通常支払うべき使用料相当額 |
| 従業員 | 社宅・寮 | 算式による賃貸料相当額の50%以上 |
役員については、原則として賃貸料相当額の全額を受け取る必要があります。
従業員については、賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば給与課税されないという違いがあります。
10 固定資産税課税標準額はどのように確認する?
賃貸料相当額を正確に計算するためには、次の資料が必要です。
- 建物の固定資産税課税標準額
- 土地の固定資産税課税標準額
- 建物の総床面積
- マンションの場合は土地・建物の持分
- 建物の構造と法定耐用年数
固定資産税課税標準額は、毎年1月1日時点の固定資産課税台帳に登録された価格を基礎とします。
固定資産税の評価額が改定された場合は、原則として賃貸料相当額を計算し直します。ただし、従業員社宅については、課税標準額の改定幅が20%以内であれば再計算が不要とされる取扱いがあります。
借上げ物件の場合、会社は固定資産税課税標準額を直接把握できないため、家主や管理会社へ資料の提供を依頼する必要があります。
マンションの土地や共用部分については、持分割合や床面積などにより合理的に按分して計算します。
11 借上げ社宅の仕訳
会社が月額10万円の家賃を支払い、役員または従業員から月額3万円の社宅使用料を受け取るケースを考えてみましょう。
家主へ家賃を支払ったとき
地代家賃 100,000円 / 普通預金 100,000円
住宅用家賃は消費税の非課税取引です。
したがって、消費税区分は「非課税仕入」などを使用します。
給与から社宅使用料を天引きしたとき
給与 XXX円 / 普通預金 XXX円
/ 預り金・所得税 XXX円
/ 預り金・社会保険 XXX円
/ 地代家賃 30,000円
社宅使用料を地代家賃のマイナスとして処理する場合でも、消費税区分には注意が必要です。
借方に計上した家賃の取消しではないため、社宅使用料部分の消費税区分は「非課税仕入のマイナス」ではなく「非課税売上」とします。
別の方法として、次のように社宅使用料収入や雑収入として処理することもできます。
給与 XXX円 / 社宅使用料収入 30,000円
ただし、支払家賃を販売費及び一般管理費に計上し、社宅使用料を営業外収益の雑収入に計上すると、損益計算書上は支払家賃の全額が営業利益を減少させる一方、社宅使用料は営業利益の下に表示されます。
そのため、金融機関に提出する決算書の見え方や費用収益の対応を考えると、社宅使用料を地代家賃のマイナスとして処理し、補助科目で管理する方法が分かりやすいでしょう。
いずれの方法を採用する場合も、毎期継続して同じ方法で処理することが大切です。
12 借上げ社宅の消費税
住宅の貸付けは、原則として消費税の非課税取引です。
社宅や従業員寮も住宅に含まれるため、次の両方が非課税となります。
- 会社が家主に支払う住宅家賃
- 会社が役員・従業員から受け取る社宅使用料
会社が従業員へ転貸する目的で借りた住宅についても、住宅として使用することが契約や使用状況から明らかであれば、家主に支払う家賃は非課税となります。
ただし、次のような費用は、住宅家賃とは消費税の取扱いが異なる場合があります。
- 仲介手数料
- 家賃と別に契約する駐車場代
- 専有部分の水道光熱費
- 家具や備品の購入費
- 修繕費
例えば、家賃とは別契約・別料金になっている駐車場使用料は、原則として消費税の課税取引です。
契約書や請求書の内訳を確認し、家賃とそれ以外の費用を区分して処理しましょう。
13 社会保険は所得税と計算方法が異なる
借上げ社宅を導入する際は、所得税だけでなく社会保険の取扱いにも注意が必要です。
健康保険・厚生年金では、会社から住宅の提供を受けることが現物給与として扱われる場合があります。
所得税の賃貸料相当額と、社会保険における住宅の現物給与価額は計算方法が異なります。
そのため、所得税が非課税になったからといって、必ずしも社会保険料の計算上も影響がないとは限りません。
なお、2026年10月1日から、社会保険における住宅の現物給与価額と算出方法が改正され、従来の「畳一畳当たり」から「総面積1平方メートル当たり」の計算へ変更されます。
借上げ社宅を導入するときは、税務と社会保険の両方を確認しましょう。
14 借上げ社宅でよくある間違い
家賃の50%を受け取れば必ず問題ない
役員の小規模住宅と従業員社宅については、実際の家賃の50%を受け取るというルールではありません。
役員か従業員か、住宅の床面積、建物の耐用年数によって計算方法が変わります。
本人名義の賃貸契約のまま会社が家賃を支払う
本人名義の契約のまま会社が家賃を支払うと、原則として住宅手当や給与として課税されます。
借上げ社宅にする場合は、会社が借主となる契約が必要です。
固定資産税課税標準額を確認せず、適当に家賃を決める
実際の家賃が10万円だから、本人負担を2万円にする、といった決め方だけでは税務上の根拠がありません。
固定資産税課税標準額などを確認し、計算資料を保存しておきましょう。
役員から受け取る家賃が不足している
役員から受け取る金額が賃貸料相当額を下回っている場合、その差額は原則として役員給与として課税されます。
経済的利益の額や発生状況によっては、法人税における役員給与の損金算入にも影響する可能性があります。
まとめ
借上げ社宅は、役員や従業員の住居費を会社が適切に負担できる、効果の大きい福利厚生制度です。
一方で、次の点を誤ると、会社負担分が給与として課税される可能性があります。
- 会社名義で賃貸借契約を結ぶ
- 会社から入居者へ社宅として貸与する
- 役員と従業員を区分して賃貸料相当額を計算する
- 固定資産税課税標準額などの計算資料を保存する
- 社宅規程を整備する
- 毎月確実に社宅使用料を徴収する
- 消費税区分を正しく設定する
- 社会保険の現物給与も確認する
特に役員社宅は、住宅が小規模住宅に該当するかどうかによって本人負担額が大きく変わります。
仙台市で借上げ社宅や役員社宅の導入を検討している法人の方は、賃貸借契約を変更する前に、社宅使用料の計算や社宅規程の内容を税理士へ確認することをおすすめします。
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