法人の本店が移転した際の手続き

法人の本店を移転した場合には、法務局で本店移転登記を行い、その後、履歴事項全部証明書を取得します。
本店移転登記は、原則として本店移転の効力が発生した日から2週間以内に行う必要があります。法務局の案内でも、会社の登記は原則として登記すべき事由が発生したときから本店所在地において2週間以内とされています。
また、定款に記載されている本店所在地の内容によっては、定款変更の手続きが必要になる場合があります。例えば、定款に本店所在地を具体的な番地まで記載している場合や、市区町村をまたいで移転する場合には、定款変更の要否を確認しておきましょう。法務局の本店移転登記申請書の記載例でも、定款変更をする場合には株主総会議事録が必要とされています。
なお、同一管轄内の移転であっても、本店所在地が変更になる以上、各行政機関への届出が不要になるわけではありません。ただし、管轄外へ移転する場合と比べて、提出先、添付書類、手続きの順番などが異なる場合があります。 変更登記後に行う主な手続きは、以下のとおりです。
1 税務署
本店を移転した場合は、異動前の納税地を管轄する税務署へ「異動届出書」を提出します。
同じ税務署の管内で移転した場合でも、法人の納税地が変更になるため、異動届出書の提出は必要です。この場合、提出先が結果的に同じ税務署になるだけで、手続き自体が不要になるわけではありません。
国税庁の案内では、異動届出書の提出時期は「異動等後速やかに」とされており、提出先は「異動前の納税地の所轄税務署長」とされています。添付書類は不要ですが、異動内容の確認のため、定款等の写しの確認を求められる場合があります。
給与の支払いをしている法人の場合は、あわせて「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も提出します。移転の場合の提出先は、移転前の給与支払事務所等の所在地を管轄する税務署です。提出期限は、移転の事実があった日から1か月以内です。
なお、消費税に関する異動事項については、異動届出書の「消費税」欄に記載することで、原則として別途「法人の消費税異動届出書」を提出する必要はありません。また、インボイス登録をしている法人についても、異動届出書の所定欄に記載することで、適格請求書発行事業者登録簿の変更届出書を重ねて提出する必要はないとされています。
2 県税事務所・市役所
本店所在地が変わった場合は、県税事務所や市役所にも異動届出書を提出します。
同じ県税事務所や同じ市役所の管内で移転する場合でも、法人の所在地が変わるため、原則として異動届出書の提出が必要です。
一方、移転前と移転後で都道府県や市区町村が変わる場合には、異動前・異動後の双方の自治体で手続きが必要になることがあります。
提出期限、提出先、添付書類は自治体によって異なります。eLTAXの異動届の記載要領でも、提出期限や提出先は各団体で異なるとされており、登記を要する異動については、異動事実が確認できる登記事項証明書等の添付が必要とされています。また、定款変更等を要する場合には、定款等の写しも添付書類として挙げられています。
一般的には、履歴事項全部証明書の写しを添付します。定款変更を伴う場合には、定款の写しの提出を求められることがあります。
宮城県の場合、法人の本店移転や支店設置等については「法人設立等届出書」を使用し、提出期限は事実が発生してから1か月以内とされています。
3 年金事務所
社会保険に加入している法人の場合は、「健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を提出します。
年金事務所の手続きは、同一管轄内の移転か、管轄外への移転かによって取扱いが分かれます。
同一の年金事務所管轄内で所在地を変更する場合は、事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出します。提出期限は、事実発生から5日以内です。法人事業所の場合の添付書類は、法人登記簿謄本のコピーです。添付する法人登記簿謄本のコピーは、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものが必要です。
一方、年金事務所の管轄外へ移転する場合は、変更前の事業所所在地を管轄する年金事務所へ提出します。この場合も、提出期限は事実発生から5日以内です。管轄外移転の場合、届出は変更前の年金事務所へ行いますが、その後、変更後の所在地を管轄する年金事務所へ引き継がれるため、改めて変更後の年金事務所へ届出する必要はありません。
協会けんぽに加入している法人が他の都道府県へ移転する場合には、健康保険料率が変わることがあります。この場合、届書に記載された「事業開始年月日」から変更後の健康保険料率が適用され、すでに徴収済みの健康保険料に過不足があるときは、管轄変更後に初めて納付する保険料で精算されます。
また、現在は従来の健康保険証の新規発行が終了しており、マイナ保険証や資格確認書を前提とした取扱いになっています。令和6年12月2日以降、健康保険証の新規発行は終了し、マイナ保険証を利用できない方については、協会けんぽが発行する資格確認書で医療機関等を受診する仕組みになっています。
管轄内の所在地変更の場合、交付されている資格確認書、高齢受給者証、限度額適用認定証等については、記載内容に変更がなく引き続き使用できるため、返納は不要です。
他の都道府県へ事業所が移転する場合には、資格確認書等に記載されている記号が変更となるため、事業主は交付されている資格確認書等を従業員から回収し、協会けんぽ支部へ返送する必要があります。
4 労働基準監督署
労働保険に加入している法人の場合は、「労働保険名称・所在地等変更届」を提出します。提出期限は、変更が生じた日の翌日から起算して10日以内です。
同じ労働基準監督署の管内で移転する場合でも、事業所の所在地が変わるため、手続きは必要です。
管轄を越えて移転する場合は、新しい所在地を管轄する労働基準監督署へ「労働保険名称・所在地等変更届」を提出します。ハローワークの案内では、管轄を越えて移転した場合には、新しい所在地を管轄する労働基準監督署およびハローワークで手続きし、旧所在地での手続きは不要とされています。
添付書類としては、履歴事項全部証明書のコピーなど、新所在地を確認できる資料を求められることがあります。
なお、労働保険関係の手続きは電子申請も可能です。労働保険関係手続きについては、e-Gov経由でGビズIDを利用して手続きできるものがあります。
5 ハローワーク
雇用保険に加入している法人の場合は、ハローワークへ「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。提出期限は、変更があった日の翌日から起算して10日以内です。
管轄を越えて移転する場合は、新しい所在地を管轄するハローワークへ提出します。この場合、労働保険番号が変更になるため、先に新管轄の労働基準監督署へ「労働保険名称・所在地等変更届」を提出し、その後、ハローワークへ「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。
ハローワークへ提出する際には、労働基準監督署へ提出した「労働保険名称・所在地等変更届」の事業主控えのコピーや、履歴事項全部証明書のコピーなど、新所在地を確認できる資料が必要になります。
一方、同じハローワークの管轄区域内で移転する場合でも、労働基準監督署とハローワークの両方で手続きが必要です。ただし、この場合は、労働基準監督署とハローワークの手続きの順番はどちらが先でも差し支えないとされています。 なお、建設業などの二元適用事業所については、取扱いが異なる場合がありますので、事前に管轄の労働基準監督署またはハローワークに確認しておくと安心です。
まとめ
法人の本店移転では、法務局での登記だけでなく、税務署、県税事務所、市役所、年金事務所、労働基準監督署、ハローワークなど、複数の行政機関で手続きが必要になります。
特に注意したいのは、同一管轄内の移転であっても、届出自体が不要になるわけではないという点です。
同一管轄内の場合は、提出先が同じで済んだり、資格確認書等の返納が不要であったり、手続きの順番が比較的柔軟であったりすることがあります。一方で、管轄外へ移転する場合には、提出先や添付書類、手続きの順番が変わることがあります。
本店移転後は、まず履歴事項全部証明書を取得し、各行政機関ごとの提出期限や添付書類を確認しながら、漏れなく手続きを進めましょう。
法人の本店移転に伴う税務署や自治体への届出で不安がある場合は、税理士に相談しながら進めると安心です。仙台市で法人の本店移転や税務手続きについてお困りの方は、佐沼幸太郎税理士事務所までお気軽にご相談ください。
仙台市若林区土樋76ファミール愛宕202 佐沼幸太郎税理士事務所


