【税務調査】帳簿の不提示・記載不足で加算税が最大10ポイント加重|制度と注意点を解説

 税務調査では、申告した数字だけでなく、その根拠となる帳簿や請求書、領収書などの保存状況も確認されます。
 令和4年度税制改正により、税務調査で売上げに関する帳簿を提示・提出しなかった場合や、帳簿への売上金額の記載が著しく不十分だった場合には、通常の過少申告加算税または無申告加算税の割合が、最大10ポイント加重される制度が設けられました。現在、個人事業主・法人ともにすでに適用対象となっています。

 ここで注意したいのは、所得税や法人税そのものが10%増える制度ではないという点です。
 加重されるのは、申告漏れなどに対して課される過少申告加算税または無申告加算税です。

 今回は、税務調査で帳簿を提示できなかった場合の加算税の加重措置について、対象となる帳簿や適用条件、税務調査に備えて注意しておきたいポイントを解説します。

1 帳簿の不提示・記載不足による加重措置とは

 税務調査において、税務職員から「売上げ(業務に係る収入を含む。)に関する調査に必要な帳簿」の提示または提出を求められ、一定の場合に該当すると、通常の過少申告加算税・無申告加算税が加重されます。

帳簿の状況加重される割合
帳簿を提示・提出しなかった10ポイント
帳簿に記載された売上金額が、本来記載すべき金額の2分の1未満10ポイント
帳簿に記載された売上金額が、本来記載すべき金額の2分の1以上3分の2未満5ポイント

 つまり、「3分の2未満」であっても、さらに「2分の1未満」に該当する場合には10ポイント加重となります。
 例えば、本来帳簿に記載すべき売上金額が2,000万円であるにもかかわらず、800万円しか記載されておらず、その結果1,200万円の申告漏れが生じていたとします。
 800万円は2,000万円の2分の1未満ですので、申告漏れ1,200万円に対応して新たに納付する所得税について課される過少申告加算税の割合が10ポイント加重されることになります。

2 この制度はいつから適用されている?

 この制度は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する申告所得税、法人税・地方法人税、消費税について適用されています。
 通常の申告期限を前提とすると、主な適用開始時期は次のとおりです。

税目主な適用開始
申告所得税令和5年分から
法人税・地方法人税令和5年10月決算期分から
3月決算法人令和6年3月決算期分から
消費税原則として所得税・法人税と同様
課税期間を短縮している消費税令和5年10月以後に課税期間が終了するものから

 申告期限が定められていない還付申告については、令和6年1月1日以後に還付申告をしたものが対象です。
 なお、この制度における消費税には輸入に係る消費税は含まれません。
 現在では適用開始からすでに時間が経っており、今後の税務調査では通常に意識しておくべき制度といえます。

3 対象となる「帳簿」とは

 この制度の対象になるのは、保存しているすべての書類ではありません。
 所得税法、法人税法または消費税法に基づいて備え付け・保存する帳簿のうち、売上げや業務に係る収入を確認するために必要な帳簿が対象です。

 例えば、

  • 青色申告者・青色申告法人の仕訳帳、総勘定元帳
  • 白色申告者等が作成する売上帳
  • 現金出納帳など、売上金額を確認できる帳簿
  • 消費税法に基づいて別途作成・保存している帳簿

 などが該当します。
 個人の所得税について対象となるのは、原則として、
 事業所得・不動産所得・山林所得
 を生ずべき業務を行っている人です。

 一方、雑所得を生ずる業務については、所得税についてこの加重措置の対象とはなりません。ただし、その人が消費税の課税事業者であれば、消費税については対象となる場合があります。

4 請求書や領収書があれば帳簿として認められる?

 「帳簿は作っていないけれど、請求書や領収書は全部残している」というケースもあります。
 しかし、請求書や領収書の控えを袋や箱の中に雑然と保管しているだけでは、原則として帳簿とはいえません。

 一方、国税庁Q&Aでは、個人事業者について、

  • 取引年月日
  • 取引先
  • 金額

 などが記載された請求書等を年月日順に整理するなど、帳簿と同程度に取引を管理できる規則性をもって保存している場合には、この加重措置を判定する際に帳簿として取り扱うとしています。
 ただし、ここは注意が必要です。
 この制度上「帳簿」として取り扱われたからといって、青色申告などに必要な正式な帳簿の記載要件を満たしたことになるわけではありません。
 帳簿の不備によって、別途、青色申告の特典が受けられなくなる可能性があります。

 したがって、「請求書が残っているから大丈夫」と考えるのではなく、日頃から会計ソフトなどを利用して適切に帳簿を作成しておくことが重要です。

5 帳簿はいつまでに提示すればよい?

 税務職員から帳簿の提示・提出を求められた場合には、遅滞なく提示する必要があります。
 国税庁は「遅滞なく」について、
 正当な理由または合理的な理由がない限り速やかに
 という考え方を示しています。

 事前通知のある税務調査では、通常、調査対象となる帳簿があらかじめ通知されます。
 そのため、調査開始日時までに提示できるよう準備していれば問題ありません。

 一方、無予告の税務調査であっても、税務職員から対象となる帳簿について説明を受けた後、保存している帳簿を正当な理由なく速やかに提示しなければ、加重措置の対象となる可能性があります。
 「今日はないので、そのうち探しておきます」という対応で必ず認められるわけではありません。

6 仕訳帳や総勘定元帳がなければ必ず10ポイント加重?

 青色申告者や青色申告法人は、原則として仕訳帳や総勘定元帳など所定の帳簿を作成・保存する必要があります。
 しかし、この加重措置については、仕訳帳や総勘定元帳だけで判断されるわけではありません。

 例えば、仕訳帳や総勘定元帳を提示できなかったとしても、売上帳や現金出納帳など別の帳簿に適正な売上金額が記載され、その帳簿を提示できれば、この加重措置が適用されない場合があります。
 ただし、仕訳帳や総勘定元帳を作成・保存していないこと自体は別の問題です。
 青色申告の要件を満たさなくなるなどの可能性がありますので、
 「10ポイント加重されなければ帳簿を作らなくてもよい」
 ということではありません。

7 災害やシステム障害で帳簿を提示できない場合

 帳簿を提示できなかったからといって、必ず加重措置が適用されるわけではありません。
 納税者の責めに帰すべき事由がない場合は対象外となります。
 例えば、

  • 地震、風水害、火災などによって帳簿を失った
  • 帳簿作成に使用しているシステムに重大な障害が発生した
  • 病気による入院など、やむを得ない事情があった

 といったケースです。
 ただし、「パソコンが壊れた」「データが消えた」と説明するだけで当然に認められるわけではありません。
 国税庁は、例えば、

  • 罹災証明書
  • 損害保険料の支払証明書
  • システム運営会社等による障害の証明

 などで確認することを示しています。
 クラウド会計の利用や定期的なバックアップなど、帳簿データを失わないための対策も重要です。

8 売上帳に漏れがあっても、別の帳簿に正しく記載されていれば?

 一つの帳簿に売上げの記載漏れがあっただけで、直ちに加重措置が適用されるわけではありません。
 例えば、売上帳の記載が不十分だったとしても、現金出納帳など別の帳簿に売上げが正しく記載され、その帳簿を提示できれば、この加重措置は適用されません。
 重要なのは、保存している帳簿全体を確認した結果、売上金額を適正に把握できる状態になっているかどうかです。
 また、消費税について、課税売上げを誤って非課税売上げとして帳簿に記載していた場合でも、売上金額そのものが帳簿に記載されていれば、そのことだけを理由に「記載が不十分」とはされません。

9 どの申告漏れまで10ポイント加重される?

 ここは特に注意したい部分です。

 個人の所得税の場合
 所得税の場合、税務調査で指摘された税額のすべてが必ず加重対象になるわけではありません。
 例えば、

  • 事業所得の必要経費の過大計上
  • 事業所得の申告漏れに伴って生じた配偶者控除等の変更

 などは加重対象となります。
 一方、

  • 一時所得の申告漏れ
  • 保険料控除や扶養控除そのものの適用誤り

 など、事業等の帳簿に基づいて計算されない事項については、この制度による加重の対象とはなりません。

 法人税・消費税の場合
 一方で、法人税・地方法人税・消費税については扱いが異なります。
 国税庁は、これらの税額計算については、一般的にすべての事項が帳簿に記載すべき事項に該当すると考えられることから、税務調査で指摘された非違事項に基づく税額のすべてが加重対象になるとしています。
 特に法人の場合は、帳簿を適正に作成・保存しておくことの重要性がより高いといえるでしょう。

10 重加算税にもさらに10ポイント加重される?

 この制度の対象となるのは、
 過少申告加算税と無申告加算税
 です。
 仮装・隠蔽があった場合の重加算税や、源泉所得税などを期限までに納付しなかった場合の不納付加算税は、この制度の対象ではありません。
 したがって、この加重措置が適用される状況であっても、その部分について重加算税が課される場合には、
 重加算税にさらに5ポイント・10ポイントが上乗せされるわけではありません。
 もちろん、帳簿を意図的に破棄したり、売上げを隠すために虚偽の帳簿を作成したりすれば、別途重加算税の問題が生じる可能性があります。

11 税務調査前に自主的に申告した場合は?

 まだ税務調査を受けておらず、税務職員から帳簿の提示・提出を求められていない段階で、自ら申告漏れに気付き、期限後申告や修正申告をした場合には、この帳簿不提示等による5ポイント・10ポイントの加重措置は適用されません。
 ただし、期限後申告であれば通常の無申告加算税や延滞税がかかる場合があります。
 また、修正申告については、

① 税務調査の事前通知前に自主的に修正申告した場合
→ 原則として過少申告加算税はかかりません。

② 事前通知後、調査による更正を予知する前に修正申告した場合
→ 原則として新たに納める税額の5%の過少申告加算税が課されます。一定の金額を超える部分については10%となります。

③ 調査による更正を予知した後に修正申告した場合
→ 原則10%、一定の金額を超える部分は15%となります。

 申告漏れに気付いた場合には、そのままにせず、できるだけ早く対応することが大切です。

まとめ

 帳簿の不提示や記載不足による加算税の加重措置について、特に重要なのは次の点です。

  • 加重されるのは本税ではなく、過少申告加算税・無申告加算税
  • 帳簿を提示・提出しなかった場合は10ポイント加重
  • 売上金額の記載が本来の2分の1未満の場合は10ポイント加重
  • 2分の1以上3分の2未満の場合は5ポイント加重
  • 売上げや業務収入を確認するための帳簿が対象
  • 請求書や領収書を単に箱に入れて保存しているだけでは不十分
  • 別の帳簿に売上げが適正に記載されていれば、加重されない場合がある
  • 災害など納税者の責任ではない事情がある場合には適用されないことがある
  • 法人税・消費税では、所得税よりも加重対象となる税額の範囲が広い

 税務調査への対策は、調査の連絡を受けてから始めるものではありません。
 日頃から売上げや経費を正確に記帳し、会計帳簿と請求書、領収書、預金通帳などを照合できる状態にしておくことが、最も基本的で重要な税務調査対策です。

 佐沼幸太郎税理士事務所では、仙台市を中心に、個人事業主・法人の記帳、確定申告、法人決算、税務相談、税務調査対応をサポートしています。
 帳簿の作成方法や保存状況に不安がある方、税務調査の連絡を受けてどのように対応すればよいか分からない方は、佐沼幸太郎税理士事務所へお気軽にご相談ください。

 参考資料
 国税庁「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関するQ&A」および国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」を基に、2026年9月2日時点の制度を確認しています。

執筆:代表税理士 佐沼 幸太郎

仙台市若林区土樋76ファミール愛宕202 佐沼幸太郎税理士事務所